5月7日 (木)  コロナを暫し忘れて。

庭に一本のブナの木がある。
道路の下にある樹齢ン百年の欅のように、そのうち我が家を守ってくれるだろう・・と種から育てたブナだ。
ただし、それまでにはチョイと物語がある。

まだ、丹沢フォーラムや植樹活動など市民参加のイベントが行われる前の事。
高い標高のブナが枯はじめ、笹が後退しはじめ・・「なんとかしなきゃな〜」と思い始めた頃だ。

丹沢の堂平と言う場所にブナの種子採取用ネットが張ってあった。
中をのぞくとブナ以外の種もたくさん入ってた。
それを持ち帰り種子ごとに分ける。
・・と言っても、種の種類も解らない私は見ているだけだ。

分別の最後に種子の健康度の簡単な見分け方を教えてくれた。
水を張ったボールの中に一握りのブナの種を落とす。
すると沈む種と浮いたままの種がある。
「ネッ!沈んだ種は中身が詰まってる。浮いてる種は空だ。・・・沈んだ種を発芽させ畑で育てる。」・・と言います。
なるほど、子供にも解る見分け方だ・・と感心しました。

感心していると、浮いてる種を網ですくい捨てようとするので、「チョッと待って、その種ちょうだい。」と頼みました。
「道っちゃんダメだよ、あげてもいいけど発芽しないから・・持って行くならコッチを持って行けば」と沈んだ方の種を薦めます。

人間だってダメだ・・と言われながらも何処かで期待するじゃないか・・木の種だってもしかしたら・・があるかも知れない。
元気な種を貰うことを遠慮するほど謙虚じゃありませんが「まあ、そっちは試験用だし、どうせ捨てちゃうものなら」・・と、浮いた種を貰い、水浸しのままビニール袋に入れて我が家に持ち帰りました。

植木鉢の土の中に持ち帰ったダメな種を入れました。
毎日のように植木鉢を眺める初夏・・芽が出たんです。
感動の一瞬でした。
「ダメな奴からも芽が出た!」と、すぐにその感想を電話すると、「まあ、一つくらいあるかもな」と素っ気ない返事。
こいつには感動と言う感覚の持ち合わせはないのか・・と思いました。
「結果」を急がなきゃ「期待」は出来る・・の好見本です。

25年前、家を建て替える時も、建設屋さんに1mに満たない木を指し「この木は絶対に傷をつけるな!」と言いました。
いま6mほどに成長し緑の樹冠を楽しみます。

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